あいにくの天候にもかかわらず、遠方の方も含めて100名を超える皆様にご来場頂きました。内容をラックに特化した初の講演会であり、ラック生産地での貴重な写真や動画も含めた報告と、ラックにまつわる品々の展示をご覧いただき、会場の皆様からも貴重なご意見やご質問が続きました。どうもありがとうございました。
京都大学農学部名誉教授の渡辺弘之先生による基調講演は、「あなたはカイガラムシを食べている」という少々ショッキングなタイトルで、ラックやコチニールを使った食品を紹介いただいたほか、1990年代にインドやタイを調査訪問された際の写真と資料をご紹介いただきました。ご著書の「カイガラムシは熱帯林を救う」に白黒で印刷されていた写真も含め、当時の生産現場の写真は現在では大変貴重なものでした。
渡辺先生はラックやコチニールを用いたさまざまな食品の包装紙と、インドネシアの種ラック容器「ケロソ」、ブータンのラックなどをご持参くださいました。
綿臙脂の復元研究をされている画家の沓名弘美氏は、「中国とその周辺におけるラック」というタイトルで、綿臙脂とラックに関する中国の文献資料の解説と、中国での調査時の様子をご説明くださいました。
沓名氏には文化財保存修復学会と、Dyes in History and Archeologyの大会での発表ポスターと、アジア各地のスティックラックを展示していただきました。
ブータンゆっくり勉強会主宰の久保淳子氏は、「ブータンのラック養殖とラックの利用について ~ラック染色の技法を中心に~」 というタイトルで、ブータンのラック産地の様子と、染め、塗料、接着剤、それぞれの利用方法を動画も交えてわかりやすくご説明いただきました。
久保氏は貴重なブータンのラックを使った染織品と染めの見本を、染めの解説や写真とあわせて展示してくださいました。
本講演会を企画した、京都府立大学共同研究員の北川美穂は、インドでのラック生産に関する複数機関と精製、加工の工程、インドでの主力養殖種であるKerria laccaの種と成長過程、寄生木などについてお話しました。中でも、3日しか生きられないラックカイガラムシのオス成虫の動画は会場からも驚きの声が上がりました。
また、ラック研究の政府機関であるインド天然樹脂研究所と中国林業科学研究院資源昆虫研究所の解説と現地で入手したラックと、1月に調査を行ったインド、グジャラート州ブージ郊外でのラックを使った染めの工程と、現物の展示を行いました。
日本セラック協同組合様にも、組合加盟会社の製品と、シェラックが使われた品物を展示していただきました。ご提供いただいた解説したパンフレットも大変好評で、あっという間になくなりました。ご協力ありがとうございました。
遠方のため、またはご都合が合わずにお越しいただけなかった皆様には、当日の講演要旨などを以下からダウンロードいただけます。
(→第一回ラック研究会・講演会「ラック生産の現場から」講演要旨 渡辺弘之先生、沓名弘美氏、久保敦子氏、北川美穂)
(→第一回ラック研究会・講演会展示ポスター Ajrakh工房でのラック染め、ラック研究機関、ブータンのラック)
(→第一回ラック研究会・講演会チラシ表、裏)
当日は、72名の方にアンケートにご回答いただきました。ご協力いただきましてありがとうございました。(→ アンケートの結果ページへ)
第2回ラック研究会・講演会は2016/11/3(木)に、「ラックを科学する」というテーマで開催を予定しております。
ポスター発表、展示をご希望の方、また、ラックについてできるだけ多くの方に相談をしたいという方の質問の場を設けさせていただきます。以下までご連絡ください。
lacstudygroup#gmail.com (#を@に置き換えてください)
詳細はこのページと、Facebookの「ラック研究会Lac Study Group」のページ https://www.facebook.com/lacstudygroup/ でお知らせいたします。